取材先: 〇〇 〇〇 〇〇 〇〇 〇〇保育園 (石巻市)
お話しを聞いた人: 保育士 佐藤 由紀 先生

はじめに:「自分で選べる場所」を目指した園舎改築
石巻市にある「〇〇〇〇〇〇〇〇保育園」。
約3年前に行われた園舎の建て替えを機に、園庭の環境づくりが大きく動き出しました。
「ただ決められた遊具で遊ぶのではなく、子どもたちが自分の意思で『どれにしようかな』と選び、遊びを展開できる場所にしたい」
そんな想いからスタートした園庭改革。当初の提案にあった一般的な滑り台やブランコをただ配置する計画を見直し、現場の保育士たちのアイデアや熱意を取り入れることで、現在の魅力あふれる園庭が誕生しました。
今回は、環境構成を担当されている佐藤由紀先生に、環境づくりのこだわりや子どもたちの変化について詳しくお話を伺いました。
あえて高さをバラバラに。「できた!」を引き出す細やかな工夫
「〇〇〇〇〇〇〇〇保育園」の園庭で一際目を引くのが、温かみのある木製の複合遊具です。一番のこだわりは、ステップや段差の高さをあえて「バラバラ」に設計している点にあります。
「同じ年齢クラスであっても、子どもの体格や運動発達のペースは一人ひとり全く異なります。2歳児から5歳児まで、誰もが『今の自分にちょうどいい高さ』や『少し頑張れば届くコース』を自分自身で選べるようにしたかったんです」と佐藤先生は語ります。
遊具の下には安全面に配慮して全面にウッドチップが敷き詰められています。しかし、このウッドチップには単なる怪我防止以上の想いが込められています。
「ただ安全なだけでなく、『転んでも痛くないから、また立ち上がって挑戦できる』という、子どもたちのたくましさとチャレンジ精神を支える環境を目指しました」

予算の壁を乗り越えた「築山(つきやま)」のアイデアと保護者との対話
理想的な環境づくりを進める中で、最大の課題となったのが「予算」でした。すべての遊具を特注で揃えようとするとコストが大幅にオーバーしてしまうため、園では地域の自然形状を生かした大きな「築山(つきやま)」を作る決断をしました。
「遊具の数を無理に増やさず、土を盛ったシンプルな築山を作ったことでコストを抑えることができました。今では、子どもたちが駆け登ったり、転がり落ちたり、冬にはダンボール滑りをしたりと、一番人気の遊び場になっています」
また、設置当初は保護者から「高さがあって少し心配」という声が寄せられたこともあったそうです。
これに対し園では、送迎の時間帯に実際に子どもたちが生き生きと安全に遊んでいる様子を見てもらったり、写真付きのお便りで安全対策や意図を丁寧に伝えたりすることで、少しずつ理解と信頼を深めていきました。また、施工を手掛けた地元の工務店との繋がりも、地域の温かい支えとなっています。

遊びの中で生まれた「自発性」と「異年齢の関わり」
この環境が整ってから、子どもたちには嬉しい変化が表れ始めました。
以前は外遊びに対して少し消極的だった子どもが、自分から「今日はあっちの難しいコースに挑戦してみる!」と意欲を見せるようになったのです。自分の力に合わせて難易度を選べ、失敗してもやり直せる安心感があるからこそ、主体性が育まれています。
さらに、遊具や築山を通じて「自然な異年齢の関わり」も生まれるようになりました。
「年上の子が年下の子の手を引いて『こっちの道の方が登りやすいよ』と教えてあげたり、頑張っているお友達を応援したりする姿が日常的に見られるようになりました。空間の工夫が、子ども同士の心をつなぐきっかけになっています」

最後に:環境づくりは「小さな一歩」から
最後に、日々保育環境の向上に取り組む県内の先生方へ、佐藤先生からメッセージをいただきました。
佐藤由紀 先生からのメッセージ
「環境を変えるとなると、お金も手間もかかって大変そう…と感じるかもしれません。でも、**『最初から全部を一気に変えなくても大丈夫』**とお伝えしたいです。
当園も、最初は園庭の一角に少し手を加えるところから始めました。子どもたちの遊ぶ様子をじっくり観察しながら、小さな工夫を少しずつ形にしていくこと。その積み重ねが、子どもにとっても先生にとっても心地よい環境につながっていくのだと思います。」
編集後記
「子どもにどう遊ばせるか」ではなく、「子どもがどう遊びたいか」を第一に考え抜かれた〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇保育園の園庭。段差ひとつ、ウッドチップひとつにも丁寧な意図が込められており、子どもたちの「やってみたい!」を優しく包み込む温かい空間でした。
来年度は地域の未就園児親子に向けた「園庭開放」の日数を増やす計画もあるとのこと。地域にひらかれた保育の拠点として、これからも豊かな「知恵と工夫」が広がっていくのが楽しみです。